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スキャナー・ダークリー(A Scanner Darkly) [DVDやら映画やら]

原作はフィリップ・K・ディックさん。原作小説の邦題は「暗闇のスキャナー」だった。主人公の孤独をあらわす意味では良いタイトルかもしれませんが、実際の意味は、「暗い・おぼろげ・不鮮明なスキャナー」というところでしょうか。スキャナーというと、紙の絵をコンピューターに取り込む、いわゆる「スキャン」が思い浮かんでしまいますが、ここでは「監視員」を指していて、原題は「おぼろげな監視員」という意味が近いんでしょう。特に何年という設定ではなく、「今から7年後」とされてます。原作だとSFという観念が先に立って、遠い未来が舞台のように思えたりするが、舞台はまさに現代アメリカ。主人公の名前、アークター(ARCTOR)はアクター(ACTOR)、つまり役者をもじったもんだと勝手に思ってます。スクランブル・スーツを着れば誰でもなくなる。つまり役者と同じ。スクランブル・スーツを着た人間は、他の小説で出てくるシュミラクラともいえるかも。なぜ実写じゃなくてアニメのような作風になったのかといえば、このスクランブル・スーツの表現のためかもしれないが、それよりも、「ブレードランナー」や「トータル・リコール」とかの遠い未来でない世界を実写で現すと、ディックさんの映画っぽくないと考えたからではないか。主題は「監視されている社会」。バリスがどこまでアークターのことを知っていたのか/どうやって知ったのかが謎だが、間違いなくバリスはアークターを監視しているといえるでしょう。アークターの上司、ハンクもアークターを監視している。ハンクもスクランブル・スーツを着ているが、後半で見せるその正体も驚きのひとつ。何よりもアークターが彼自身を監視している。自分を逮捕させないために自分を監視するなんてのは、自分が自分を見ているという錯覚とか妄想を抱かないと思いつかないアイデアかも。単純に「自分がどのように見えているか?」という疑問に対する答えかもしれない。ディックさんが実体験だと話すのも納得してしまう。このDVDの良いところは、特典映像ドキュメンタリーの一部で、ディックさん本人のインタビュー映像が収められていること。すでに既出の映像なんでしょうが、これだけでも価値があります。1977年の映像のようですが、映画「ブレードランナー」を待たずに亡くなってしまったのは寂しいかぎり。彼の娘さんたちもインタビューに登場します。ディックさん原作の映画としては、派手なアクションは無いし、SFや未来的話しは少ないが、素の彼にもっとも近い映画かも。面白かった。晴れ。


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