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起終点駅 ターミナル [DVDやら映画やら]

岩に波マークの東映映画。昭和63年、秋。結城冴子がめちゃくちゃつやっぽい。彼女の顔の大アップが続くシーンを見ると、これが映画俳優のだいご味なんだろうなあと思った。あの大きなスクリーンを自分だけが独り占めするんですから。そして椎名敦子との対比がすばらしい。前半、ベッドの上での鷲田完治の顔はほとんど生気が無い。この顔でいっしょに暮らそうと言われてもお先真っ暗な予感がする。たぶん冴子は、彼女が良く口にする「闘え」の言葉どおり、鷲田には家庭から逃げてほしくなかったのだろう。濃厚な20分が過ぎた後、ようやくタイトルが映し出される。そして平成26年へと時代が変わる。すっかり白髪の鷲田。お腹のたるみ方もプロフェッショナル。彼が作る食事がリアル。料理のレシピ本ではなく、新聞の料理記事の切り抜きというところが渋い。料理という行為がけっこう重要。裁判所からの帰り道。景色が客引きの繁華街、街中、橋、浜と変わっていく様子が面白い。もしかしてかなりの距離を歩いているのか。鷲田が東京の奥さんとちょっと上手くいってなさそうというのは、「お土産はイクラ」の件でだいたい想像がつくが、遠距離でダメになりそうでも東京に戻る辞令は出ていたようだし、もうちょっと何か夫婦間の説明があったらなあと思ったけれど、冴子とのシーンが濃厚なのでそれは余計だったのか。それでも冴子がしてしまうことにも明確な理由が無いような。でもうっすら分かる。それが観客が登場人物を、つまり他人が他人の生活を眺め見る場合の正しい姿なのかも。完全な説明を求める人からは色々ちゃちゃが入るかも。ただ冴子と敦子の過去や未来については深く知りたくもある。駅前の車中、鷲田の「ダメだ~」は敦子にはほんとうに予想外の応えだったのかも。後輩、森山くんの悪気の無さも面白い。たいていの人は聞いちゃいけないことなんて知らない。ラスト近くになって、隣のおじいさんのボケの件とか、子供のイクラと敦子のイクラがつながったり、最後に一龍がつぶやく「闘え~」の言葉は冴子との関係があることを示唆しているんだろうとか、静かに盛り上げてくれる。しかし無事鷲田が旅立てるのか、何か横やりが入らないか、なぜかハラハラしてしまった。昔弁護した人が恨みを持っていて、飛び出してきてギャーとかあったらどうしようなんて思ってしまったので。エンディングは歌が無いほうがしんみりできそう。東映映画にはめずらしく字幕がついていてうれしい。敦子の声がちょっとだけ聞き取りづらいので。冴子と敦子を観る映画。最初の20分は冴子のショートストーリーという感じで十分印象に残る。そして敦子の箸の持ち方になんともグッとくる。スカートもちょっと短い。鷲田の家で倒れこんだり、汗をかいてうなされているところにジンとくる。「眠りなさい」で目をつぶるところはつらそうだがとてもつやっぽい。すばらしい。面白かった。


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