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地の群れ [DVDやら映画やら]

白黒映画。昭和16年。炭鉱。深刻そうな若い男女。その関係を示唆するようなブクブク。話されることは、妹に子供が出来たがどうすんのよ!ということ。でも何もできない若い男。そしてカゴの中で騒ぐネズミとニワトリ。これがどうなるかというと・・・食事しながら見ない方がいい光景。ネズミたちはときどき現れる。そして佐世保。軍艦が並ぶ港。軍用機が飛ぶ空。宇南診療所。海塔新田は長崎の被爆者が多い町。急にグレだした胎内被曝の子供、ノブオ。彼の回想で現れる壊したマリア像の顔に現れるケロイド。それぞれの人に過去がある。彼らの他にも、「問題ないんです」「関係ないんです」などと口にしながらそれぞれが回想する過去はどれも悲惨なものだ。陰と陽が交互に映し出されるカットや、心情や状況をイメージさせるシーンが印象に残る。たとえばネズミとニワトリ、原爆被害のカット、排水のブクブク、倒されていく原爆で壊れた建物、半分が焼けたような石造の顔、ブツブツが浮かび上がるマリア様像、機関車の音に家畜の声、昇るのが困難な堤防、佐世保の基地に乗り込むノブオといっしょにカットに収まる進入禁止の看板。空からの撮影やアップに光の加減とか、差別とか部落映画である前に、映画として面白い。若さゆえの思慮の無さや、自己保身のため色々と良くないことをしてきた宇南だが、診療所をかまえたことを考えると、成功者といえるし、人並み以上の努力をしてきたことは間違いない。しかし彼は過去を忘れられない。現在がいちいち過去と重なるんです。彼は何とか這い上がってきた稀な人間だが、過去は清算しようがなかった。彼は「『変な風な部落』というのが分からない」と繰り返す。分かっているからこそ繰り返す。トクコやノブオの前では傍観者でしかいられない。共産党が党員に対してかなりひどい任務を強いている。党員は任務だけでも大変なのに、その上レッドパージで赤旗の購読者が密告される。死にかけている病人に山芋を食わせる。モリツグはそれを食べて亡くなった。仲間は「望んだことだ」と言う。モリツグを囲んで赤旗の歌を歌う仲間たち。山場はラスト近くのノブオたちの新田とトクコの部落の衝突。最初は新田に部落の人々が殴りこんだと噂されるが、その経緯がうわさによって二転三転するところが面白い。この騒動でトクコや部落の人に対応する刑事が、あきらかにやる気なさげです。洗った顔を鏡で見る奈良岡さんが怖い。団地の様子が圧巻。車に引かれず、遊具の車にこける。知らない人にはデストピア世界を描いた SF とも思える。それは部落から走ってきたノブオが行きつく米軍基地、そして未来のような団地。そこで笑みを浮かべる主婦であろう女性たち。面白がっていはいけないのだが、ぞくぞくしながらも面白かった。後を引く映画。「アテンションプリーズ」にも出ていたトクコ役の紀比呂子さんが、三條美紀さんの娘さんだとは初めて知った。曇り・雪。


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