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完全なるチェックメイト(PAWN SACRIFICE) [DVDやら映画やら]

なにやら監視されているボビー・フィッシャー。しかし監視されることは幼少の1951年に経験済み。赤狩りというやつだろうか。この頃にはもうチェスでは負け知らずだった。彼の転換点は 1962 年のチェス・オリンピアード。ロシア側選手団がドローを多用してズルをしていると考えてフィッシャーは退場してしまう。このときに彼が記者たちの前で話すときの "Today! Today!" がとても印象的。監視か調査されるている様子のフィッシャー。でも彼には主義など無い。ソ連を知っているのはチェスに勝つためだし、ベトナムも気にしていないし。そして女性扱いもうぶなようで、本人曰く童貞だった。どこまでチェス一本やりだったのか。面白いところは、チェスで勝利するだけではなく、待遇についてもとやかく要求するところ。恰好ばかりではなく、2位のメダルを受けないところが徹底している。物語の中で柱になるのは、フィッシャーのパラノイアな病気。盗聴・尾行を疑うことから始まり、ソ連の監視や共産主義の侵攻、ユダヤによるチェス界の支配、食事は目の前で作れ、ひそひそ話しに過敏になり、暗殺されることを警戒する。さらには過激な宗派のテープに耳を傾ける。そんな彼を理解しようとするのが、元プレイヤーの神父ロンバーディ。彼が話す過去のチェス・プレイヤーの末路が怖い。そんな彼が搭乗直前で乗らなかったりしたのは、果たして病気による神経過敏のためだろうか。単純にチャンピオンのロシア人、ボリス・スパスキーが怖かったのではないか。チェス・オリンピアードのときもそうだったのではないか、なんてことを思ったが、後半でのロンバーディの台詞が正解だろうと思った。ロシアのスパスキーと戦うボビーをワシントンは放っておかない。その仲介をする弁護士ポール。主義では中国、ベトナムを失ってしまったが、国としてチェスくらいは勝ちたい。ボビーたちのゲームは国家間の戦争になってしまった。ドロー狙いで勝とうとするロシア側のスパスキーにも何かある。盗聴や監視は彼らのほうがアメリカ政府より厳しそう。カリフォルニアシーンでかかるのがベンチャーズとか、チェスのロックスターと呼ばれるシーンではジェファーソン・エアプレイン、初の一勝でドゥービー・ブラザースなど、音楽の使い方が楽しい。明るめのシーンといえばドナの登場くらいなので、せめて音楽だけでも楽しいほうが疲れない。「自殺の準備を~」とか「勝った後を~」とか「ビショップを~」に対する「童貞を~」とか、字幕ですけど良い台詞が多い。フィッシャーとスパスキーの顔芸がすごい、というか対局の緊迫感は顔でしか表現できなさそう。チェスのルールなんて知らないし。チェスや将棋といった盤上の勝負ほど、役者さんの力量が試されるのかもしれない。実話をベースにしているらしく、当時のインタビュー番組にトビーさんを合成したようなシーンが見られる。原題と邦題のギャップが気になる。PAWN はチェスの駒のことだろうし、SACRIFICE はささげ物。おそらく駒はボビー自身。彼は国によって冷戦にささげられた人だったということだろう。スパスキーもただの駒。しかしラスト後のストーリーを「意外な展開」と考えるなら、結末を悟らせないためには良いタイトルだったのかもなんて考える。晴れ・曇り・雪・風。


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