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ジプシーのとき(Dom za vesanje) [DVDやら映画やら]

「空と大地が結婚して子供ができた。太陽と月と火と雲と水。空と大地の夫婦は子供たちに居場所を作った。しかし太陽が分かれたがり、他の子供たちも出ていきたがった~」考えてみると、これが映画の柱だったのかもしれない。ユーゴスラビア。かなり映画「どですかでん」な世界。ベルハンにプレゼントされた七面鳥の存在感がすごい。演技も上手い。ジプシーの日常をゆっくりと追っていくドラマかと思ったら、見事にちがった。おばあさんの息子、ベルハンから見たらおじさんはバカ。母親から金を借りるためにすることがひどい。おばあさんの言うとおり、おじさんは病気っぽい。でも孫娘、ベルハンの妹ダニラは本当に病気。おそらくマヒか何かで足が動かない。ダニラはおばあさんがアヒードの子供ロベルトを助けたことで、その礼として彼にイタリアの病院に連れて行ってもらうことになる。それにベルハンもついていくのだが、ここからが本当に大変な旅になる。おばあさんが持たせてくれるリンゴ飴がせつない。ついていったは良いが、お金が無いので妹と一緒にいれないベルハン。後からベルハンが知ることになる衝撃の事実がおそろしい。一人のジプシーの若者の人生というより、ある男の犯罪人生の物語ともいえる。ジプシーであるために悪徳商売人にだまされ、ひどい目に会う話し。都会の人からもジプシーのくせにとののしられる。言うことを聞かない子供の股間にアレをたっぷりとか、小銭を隠さないようにピョンピョン、ジャンプさせるとか。困ったときは言い訳大王になったり、「お前は息子だ」とかやさしくしたりする。「仕事をやめて犬のように生きるがいい」とか言い放つが、既に人間扱いされていない。慰霊祭の歌の字幕が欲しかった。人々が川の水で顔を洗う。身体に名前を書いてボートの上でいちゃいちゃするシーンはなんだか不思議。その他にも酒場とか、ベルハンが悩んでいる背景の歌には訳がほしい。主役はベルハンだが、妹ダニラの演技にも泣く映画。そして恋人アズラにも泣く映画。戻ってきたベルハンをじっと見つめるアズラが悲しい。そんな男ほっといておばあさんと暮らせばよかったのに。ベルハンは成長途上の子供なのでしかたがないとして、なんだかんだと男ばかりがグズでアホ。メガネっ子ベルハンとメガネを外した彼の見た目の変わりようが面白い。ベルハンにとっては叔父にあたる男は病気なのか。ドイツの話しをするし、もしかして戦争中に何かがあっての今なのか。ダメな人なりに何か物語がありそうな人でもある。ベルハンは家族に対して何もできないのかもしれないが、彼がダニラについていったことは正解だったはず。なによりもベルハンはこの世に色々と残しているし、役に立つことをした人間。最後は残念だけれども、彼の功績はそこらへんの大人よりも偉大だった。冷える。雪。


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