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にっぽん泥棒物語 [DVDやら映画やら]

東映の白黒映画。1948年の冬。東北の田舎。昭和28年。太平洋戦争に負けてから3年目。まずは三國連太郎さん演じる林田をリーダーとしたドロボーぶりを披露。見事に蔵を破って盗み出す。警察が言う「はぞう」って「蔵を破る」の「破蔵」だったのね。盗ってきたものを売りさばくも値切られる。でも元はタダだからとあきらめたりする。そして次の仕事の下調べ。そんな林田の物語。足踏みで回転させる歯医者の道具がめずらしい。わらから昇る煙に蒸気機関車の音がかぶさるところが面白い。子供に泣かれ、ドロボー先から逃げるときの三人の走りっぷりがかっこいい。寒さでズボンが凍りつき、「ガラスの股引をはいているみたいだ」という台詞が御国柄。留置場で江原真二郎さん演じる自転車ドロボーと同じ部屋になる場面で、三國さん演じる林田がタバコの火を起こすのだが、この起こし方が面白い。擦った粉は歯磨き粉だろうか。それから同じ刑務所の鈴木瑞穂さん演じる組合員木村が、白なまずに塗る薬の正体がなんと・・・子供の話しにはじんと来るが、ほんとに効くんだろうか。白なまずとは皮膚の色が抜けてしまう白斑のことのようだ。悪いことをしている途中でそうぐうした杉山事件に関わるであろう男たち。やぶをつついて蛇を出してはいけないと、話しを聞きに来る弁護士や記者をなんとかかわそうとするが、そこに今度は悪い刑事もやってきてどうなることか。林田があやしい男たちとそうぐうするときの、下から見上げるようなアングルが良かった。暗がりで顔は見えない。しかし彼らの言葉は標準語のようで、後々話題になるのか気になるところ。映画の列車事故は、「松川事件」という実際にあったことを基にしているらしい。実際の事件でも男たちの目撃証言があって、この映画では林田がそれを目撃した設定。実際に目撃した人がドロボーだったかは知りませんけど。面白い話しだが、刑務所のシーンもあるし、出てくる人ほとんどが悪い人という映画。しかし林田たちドロボーが良い人に見えてしまって困る。情に弱くてやさしい男。選挙演説シーンは映画を観ている人は林田の正体を知っているだけに笑ってしまう。圧巻はラストの証言シーン。前科持ちの悪いやつながら憎めない。最後には許してしまいそう。普通なら前科持ちの男など誰も持ち上げない。役者さんも演じていて複雑な心境だったのではなかだろうか。「散々っぱら悪いことして~」という看守の説教がちょっと正論。ドロボーも悪いが刑事も悪い。自分で勝手に調書を書くのではなくて、ウソでもなんでも証言させてそれを書く。自分は悪くないという言い逃れのためだろう。そしてこの映画のすばらしいところはとにかくなまっているところ。なまりで話し続ける役者さんたちがすごい。なまりのせいで台詞が良く分からんかったりする。字幕がほしい、といってもなまりそのままじゃ読むのが追いつかなさそう。でもなまりのおかげで東京人とのコントラストや、法廷シーンの厳しさの中の緩さが演出できているのだと思う。上は加藤嘉さんから下は初々しい千葉真一さんまで、オールスター揃いの良い映画。下といえば木村の息子が白影だった。鈴木瑞穂さんが人の良い役をやっていることになぜか安心してしまった。興味深いのは、山本監督がこの映画の前に、映画「松川事件」を撮っていることでした。面白かった。晴れ・寒い。


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