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処刑の部屋 [DVDやら映画やら]

白黒映画。市川崑監督らしい。おおにぎわいの野球場と思えば、畑で一人お腹を押さえる銀行員。意味深なシーンのあと、早々に憎らしい若者が二人登場します。一人は銀行員の息子、川口浩さん。割引手形も嘘っぱちであろうことは容易に想像できますが、ちゃんと金を返すところがまた憎らしく思えてしまう。「七人の侍」では寡黙な剣士だった宮口精二さんの役がちょっと悲しい。1956年の映画で舞台も当時としたら、彼ら大学生は18歳とすると終戦時は11年前で7歳。彼らがこれだけ自棄なのは、空襲や戦後のひもじさを絶えて生き残った事への反動があると思うが、戦争の正体を知らなかったこともあるんではないかなあ。知らぬところで戦争を始めた大人への反抗といえばありきたりすぎるかもしれないし、それはもう少し上の年代か。どっちにしろ、死んでいてもおかしくなかった世界だったからこその成せる業なんでしょう。それにくらべて彼らの親は何を考えるでもなく、暮らすことに必死で、銀行員のお父さんなんかはその最たる例だろう。映画を見はじめると、若者たちのあまりの粗暴さ、身勝手さにあきれ返ってしまうのだが、そんな背景を考えると無理らしからぬこと。きれいごとをいえばそれも若いエネルギーとでもいうんでしょうが、しかしそうした経験があったからこそ、そのエネルギーでもうちょっと親を大事にした方が良いとも思うんですが。どうでしょう、原作者の石原慎太郎さん。戦後すぐは赤狩りが多かったようですが、この頃になると、大学では平気でブルジョワとかについて討論しています。それをまとめている先生が良い思いをしていることを描いているということは、石原さんがこうした文化人を批判したかったのは明らかです。ともあれ、最初はどうしようもないクズなやつだと思ってしまったが、はねっかえりも、ここまで通されると見事。終わった頃には憎めねえなあと思ってしまう。ああなぜだ。女の子をおそってしまう最低の奴なのに。そんな矛盾を楽しむ映画。面白かった。晴れ・蒸す。


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