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瞳の奥の秘密(El Secreto de sus Ojos/The Secret in Their Eyes) [DVDやら映画やら]

アルゼンチン映画。見開かれた瞳。その瞳の先には主人公であるベンハミン。何か別離のような出だしである。英語読みならベンジャミンだろうが、スペイン語だと「JA」は「ジャ」じゃなくて「ハ」と似た発音になるので、ベンハミンなんだろうな。彼は何かを妄想、いや、思い出している様子。その残酷そうなイメージは、彼が過去に扱った事件だった。静かだが、意味深で引き込まれる出だし。集合写真の上にトレースペーパーを重ね、人型をなぞり、そこに名前を書く。そして重ねて人物と名前を合わせる。それだけのことですが、なるほどなあと思った。ベンハミンは小説を書くために、壊れたタイプライターをもらうが、タイプした紙の同じ文字だけがペンで直されている様子がおかしい。暴力で自白させることは、どの国でもあるのだなあ。でもベンハミンの上司、イレーネの、犯人のアソコは豆程度だろうという見解とか、犯人の自尊心をくすぐる自白誘導も紙一重。イレーネが容疑者にアソコを見せつけられるときに、監視員が見せる表情が良い。映画で強く主張されているのは、「不法な取調べによる自白強要」に、「法学部卒とか高卒とか、いわゆるキャリア組みとそうでないものの階級意識」、そして「政治的配慮によって解放される犯人がいる(これはたぶん司法取引)」という事実。面白いのは、それを体現しているのがロマーノという裁判所のキャリア組の男だけ。彼が諸悪の象徴のように描かれている。見るタイミングによっては、犯人よりも悪そう。サッカー場のシーンは、お国柄のせいか、とても雄大。空撮でスタジアムをなめるように撮って、ゴール時の地震みたいな振動に合わせてカメラが揺れたり、とにかく人が多いことを見せつけたり、上から下に走り回って終いにはフィールドまで追っかける。なんとも力が入ってます。あんな広い大人数のサッカー場で、たった二人で人探しをして見つかるというのが都合よすぎ。しかしこの映画にとって犯人探しは二の次。出来すぎでも捕まらなければ始まらない物語です。トリックも関係なし。ミステリーっぽいのはベンハミンの相棒だったパブロ殺しくらい。この物語で重要なのは気配とか雰囲気。それをかもし出すのが言葉であり瞳。大事なことは相手の目を見て話せというし、相手を説得させるためにはウソだって話す。それに引っかかることが出来るか否か。ウソを話せば逆に真実が見えてくる。人間はみんな正直なのか。「見ざる言わざる聞かざる」なんて言葉があるが、その逆で「見たい言いたい聞きたい」。「人には秘密がある、もうつっこまないでくれよ」それがこの映画かも。これがヨーロッパ的なんだろうか。ミステリーというより静かなホラーともいえる。ああ、面白かった。


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